歯科医でありながら、女性であるという立場から、これまでに多くの女性からセックスに関する相談を受けてきました。最初から話を聞いてもらう目的で病院を訪れる女性もいれば、まったく、別のことで受診し、診察の流れで「セックスすると、ここが痛みませんか?」と尋ねると、せきを切ったように悩みを打ち明ける女性もいます。では、産婦人科医はセックスの悩みに答える専門家なのでしょうか?残念ながら、必ずしもそうであるとはかぎりません。医学部の授業ではセックスについて習わないからです。医師国家試験や専門医試験でも、セックスに関する分野の出題は皆無といっていいでしょう。

歯科医同士で話をすると、患者さんからのそういった相談には自分の経験から答えているというドクターかほとんどだということを実感します。セックスは人間の健康な営みです。本来であれば病気を治す場所である病院で相談することではないのかもしれません。しかし、脳みや不満を抱えていてもきちんと相談できる場所かほとんどない、というのか今の日本の現状です。

こうした現実を目の当たりにして私は、妊娠や出産、子宮や卵巣の病気についてだけでなく、セックスについて勉強することは、より多くの人の助けになるのではないかと考えるようになったのです。そこで私は「日本性科学会」に参加しました。セックスそのものやセックスレス、性犯罪、性教育などすべてのセクシャルヘルスに関わる専門家の団体です。歯科医のほかに、泌尿器科医、精神科医、教育関係者などか数多く参加しています (アヤシイ人か興味本位で参加することかないよう、入会には紹介者の推薦が必要で、審査があります)。ここで今まで知りたかったことか学べ、専門家の先生方と交流や意見交換することかできました。

人間の生活から切っては切り離せないセックスですが、セックスレスやセックスの仕方ですれ違うカップルが大勢います。当サイトの情報がそのような方々に少しでも役に立てれば幸いです。

長崎恵美